味や香りも薬効のうち

漢方薬は、「味や香りも薬効のうち」とされ、本来は味わいながら香りを感じ飲むものです。

 

昔は煎じ薬しかなかったのでそうやって飲むしかなかったのですが、今は粉末のエキス剤が中心で、オブラートに包んだりそのまま水で飲む方がほとんどかと思います。

 

でも実は、エキス剤もお湯に溶いた方が効果も上がることをご存知でしたか?

 

例えばこの方。

 

30代の女性で、2年前から項や背中がはって頭痛がするようになり、最近はほぼ毎日頭痛がするとのことで近くの病院を受診されました。

 

しかし、鎮痛薬を処方されたものの改善なく、肩に注射をうけたり抗うつ薬を処方されたりしましたが、やはり改善しないとのことで受診されました。

 

診察すると葛根湯証のようでしたので、葛根湯エキスを処方し湯に溶いて飲むよう指示しました。

 

すると、2週間後受診された時には、「痛みは半分以下 常時つらいことがなくなった」と喜ばれましたが、「葛根湯は以前もらったことがあるけど水で飲んでいた」とおっしゃいました。

 

科学的には、薬は消化管から吸収され有効血中濃度に達して効果を発揮するので、効き方は同じはずです。不思議ですね。

 

漢方のエキス剤は、本来煎じ薬で飲むものを乾燥して粉状に加工したもので、例えればインスタントコーヒーのようなものです。

 

ですから、湯に溶いて元の姿に戻して飲むわけです。

 

インスタントコーヒーを胃に入れば一緒といって、粉と湯を口に入れて飲む人はいませんよね。

 

それとおもしろいのが、漢方薬は体に合っていればおいしく感じることがあることです。

 

たとえば、炎症や熱を冷ます薬は苦くて飲みづらいものが多いのですが、強い皮膚炎のある子どもが平気で飲めたり、赤ら顔で体に熱のこもったメタボの人が「この苦さがいいんだよね」と言ったりします。

 

体が必要とするものをおいしく感じるのは、咽が渇いた時の水がおいしく感じるのと同じです。

 

そして、薬が体に必要なくなったら急にまずくなったり受けつけなくなることがあります。

 

例えば、生姜を蒸して天日干した乾姜(かんきょう)という生薬は、強力に体を温める作用があり辛いのですが、冷えた人はこれが入った薬を甘く感じ、冷えがとれたら辛く感じたり胃に障ることがあります。

 

なので、味をどう感じているかということも、私たち漢方医は大切にしています。